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新月に限りなく近い三日月

2008.01.08 02:55|七儀唯冬
卒業以降の事が発表された夜。
寮の屋根で僕は携帯からとある番号に久々に電話をした。
風が少し強かったけれど、ちゃんと防寒もしてきたしここなら誰にも聞かれない。

「…もしもし?」
数回コールした後呼び出し音が途切れ、少しかすれた声が流れ出た。
多分向こう側では迷惑そうに眉をひそめてるに違いない。

「こんばんは、沫楚≪まつそ≫さん。どーもお久しぶりなの」
「…お久しぶりです、七儀さんとこの…唯冬君、でしたか」

沫楚さんはじーちゃんが死んでから七儀の家の資産管理を手伝ってくれている弁護士さんだ。
とーさんの知り合いで、じーちゃんとも面識があったらしい。
ただ親しい付き合いとは言っても、それはとーさんやじーちゃんとの事。
僕の事は気に喰わないようで、話す度に嫌味を言われるのが常だった。

「…それで、今日はどうしましたか。とうとう学園を退学される決意でも?」
「ううん、そうじゃなくて!」
慌てて否定する。
今日電話したのは、これからの事について。

「あのね、僕が高校卒業した後の事なんだけど、もう少しだけ時間が欲しいの」
「……それは、進学したい、ととって良いのでしょうか?」
「うん」
「また何故そういう事を。約束では卒業と同時に就職するとおっしゃってましたよね」
「うん。…でもね、色々な事、もっと知りたいなって思うようになったの」

入学前の約束では、高校を卒業したらすぐじーちゃんがいた組織のフロント企業に就職するという話になっていた。
でも今は、自分に足りないところ、欠けてるところをゆっくり一つずつ埋めていきたいと思うから。
だから、進学してもう少しだけ時間を作る事にした。
あっさりと就職したら忙しさに押されて出来ないだろうし。

暫くした後で、溜息が聞こえた。
「全く…その貪欲さだけは買っておきましょうか」
「じーちゃんたちが残してくれた遺産食い潰すのはよく分かってるよ。けど、」
「…分かりましたよ、先方に掛け合っておきましょう」
また盛大な溜息。
「ゴメンなさい」
「…だったら言わないでください。余計な手間が増えたじゃないですか」
「…ゴメンなさい」
「謝るのと笑うのだけは本当に得意ですよね、あなた」
「あはは、それしか無かったもの」
「そこは笑うところでは…」
「ありがとう」
「…」
一瞬の間が空く。
「…それはどういたしまして」
呆気にとられたのだろう、何しろ昔は、礼も知らない本当に笑う人形みたいなものだったから。

「ん、じゃあもう切るね?」
「先方からの返事があり次第、また連絡します」
「分かったの。それじゃあ」

ぷつりと通話を切る。
何だか、一仕事終えたような気分。
冷え切った体を風から庇うようにして屋根から下りると、僕は自分の部屋に戻った。
「また明日も学校だもの、風邪なんて引いてられないよね!」


そんな僕の後ろで、煌々と輝く三日月が満足げに笑っていた。
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秋夜

Author:秋夜
ここの管理人。
本当は「みかさ しゅうや」だけど長いので略。

民俗学と日本神話とSFとミステリとアジアンなものにときめく節操なし。
無駄なトリビアを多数所持してます。

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