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理由

2007.09.14 04:26|七儀唯冬
「比呂貴、コレで良いの?」

「あぁ、助かった」
夕日が射す白い病室。
唯冬は病室のベッドの傍らに居た。
目の前には比呂貴という名のベッドの主。
周りに人は居ない。

そして落ちる沈黙。
暫く無言のまま、立ち尽くす。
口を開いたのは、比呂貴が最初だった。

「…唯冬。お前、家を出て銀誓館に行け」

「銀誓館?」

確か鎌倉の有名校だと聞いた。
だが名前だけだ、もともと中学すら卒業していない唯冬に縁のなさそうなところでもある。

「な、お前今のままで居たら行く先、結局のとこ自滅だぞ?」

退魔活動も活発化してきている最近なら、食い扶持にも困らないだろうし。
『自分が死んでも特にどうって事ない』
そう思っていた唯冬にとって予想していた指摘だった。

「…何を言って、」

唯冬はこの場だけの冗談と言うことにしようと笑おうとする。
…しかし比呂貴はそれを許さなかった。
真剣な表情で、更に続ける。

「だから、取り返しの付かなくなる前に、もっと色んな事を学んでちったぁ成長して来い。
あすこはお前みたいな能力者の養成機関でもある、きっと役に立つだろうよ。
…必要なもんは全部揃えさせたから。後は知り合いに頼んであるからそいつを頼れ。…いいな?」

「…分かった、比呂貴が言うなら」

銀誓館が能力者の養成学校というのは初耳だった。
退魔組織に末席を置いている比呂貴だから入手できた情報だろう。
中途半端に固まった笑顔でぎくしゃくと頷くと、比呂貴がポツリとつぶやいた。

「まだ怒るとか泣くとかできねェのか?」

昔消した感情は、今のところ喜怒哀楽のうち『喜』と『楽』しか戻ってきてはいなかった。
特に唯冬自身が邪魔ものとした『不安』に繋がるものは未だ戻ってくる気配すら見せてはいない。

「うん。でもどうでもいい事だよ、それは」

「お前なぁ…!!俺ァ心配して言ってんだぞ!
ったく、そのどうでもいいところについちゃ大雑把な辺は庵に似やがって!」

「へー、父さんもそんな感じだったんだ?」

やっと普段どおりに戻れた笑顔で比呂貴の言葉をかわす。
けれど、同じように笑った筈の比呂貴の姿がなぜかいつもより随分小さく見えて、唯冬は内心首をかしげた。

「ってもうこんな時間か。おっかねぇ看護士が追い出しに来る前にお前は帰れ帰れ」
「分かった」
「…そうだ、唯冬。最後に一つだけ言わせろ」

「ん?何?」

「…すまねぇな、家族らしい事何もしてやれなくて。
庵や雪がいねぇ間、お前の傍にいてやれなくてよ。つっても、もう今更だけどな」

「そんな事ないよ」

「お前には昔みたいにじーちゃんって呼ばれたかった」

「……」

「…まだ、無理、か。仕方ねぇよなァ…。…引きとめて悪い。じゃあな」

「……またね」



その数日後、唯冬の祖父・比呂貴はこの病院で帰らぬ人となった。
ささやかながら行われた葬儀の間、唯冬は泣きも喚きもせず、ただただ無表情で喪に服していたと言う。
だがその姿は、唐突に放り出された子供が戸惑っているかのようだった。
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秋夜

Author:秋夜
ここの管理人。
本当は「みかさ しゅうや」だけど長いので略。

民俗学と日本神話とSFとミステリとアジアンなものにときめく節操なし。
無駄なトリビアを多数所持してます。

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